どのぐらい良くなる!?『側弯手術の矯正率』

今回は手術の矯正率についての情報をお伝えします。

側弯症の手術の主な目的は【側弯の改善および進行予防】です。

手術ではインプラントを用いて脊柱をまっすぐに矯正することで側弯症の改善・進行予防を図ろうとします。

手術により脊柱が真っ直ぐに近づくことで、肩バランスやウエストラインの左右差が改善したり、腰痛などの痛みが改善したりすることがあります。

今回は手術で背骨がどの程度真っ直ぐに近づくのかというテーマでスタディブログをまとめています。

手術を検討中という方は、ぜひ参考にしてみてください。


側弯症の治療方針

まずは側弯症のおおまかな治療方針について確認です。

側弯症の治療方針

側弯症の治療方針は、大まかに経過観察・装具療法・手術の3つになります。

基本的に経過観察→装具療法→手術といったように段階的に進められます。

  1. 側弯症が軽いうちは定期検診で進行の程度を確認する。
  2. 側弯症が進行してきた場合に、装具療法を開始して側弯の改善や進行の予防を図る。
  3. それでもさらに側弯症が進行した場合には、最後の砦として手術に踏み切る。

 このような流れになります。

これらの治療方針を決める判断材料のひとつがコブ角と呼ばれるものです。

側弯症のレントゲン写真とコブ角
《レントゲン写真とコブ角》

これは側弯症の弯曲(カーブ)の大きさを示したものです。

つまり、コブ角は側弯症の重症度とも言えます。

そして、手術に踏み切るのはコブ角が45°を超えてきたタイミングが多くなります。

手術による矯正について

側弯手術はインプラントを用いて、カーブした脊柱を真っ直ぐに近づけるものです。

側弯手術のレントゲン画像
Scoliosis Research Societyサイトより引用》

ただし、真っ直ぐに近づける際には、神経損傷や大出血などのリスクも伴います。

一部の論文では、思春期特発性側弯症手術において神経損傷や大出血の発生率は0.69%~1.06%であったと報告されています。

これらの合併症は様々な要因が関与しますが、カーブの矯正を過度に行うことも発生率を高めることに繋がります。

そのため、真っ直ぐは目指しつつも、安全な範囲でカーブした脊柱を矯正することになります。

実際に手術を行う前には、側弯症の方のひとりひとりに合わせて、どのくらい矯正を行うのがベストかを十分に検討されます。

手術でどの程度真っ直ぐになるかはそれぞれということを踏まえつつ、平均的な矯正率がどのくらいなのかをみておきましょう。

側弯手術のカーブ矯正率

結論から言うと、手術のカーブ矯正率はおおよそ【65〜75%程度】と考えられています。

これは、特発性側弯症に対する後方脊椎固定術という方法での結果です。

側弯症の中で最も多いのが特発性側弯症であり、手術として一般的なのが後方脊椎固定術となります。

なので、側弯症の手術に関して、『個人差はあるけど、だいたい手術をすれば側弯カーブが7割くらい良くなる』と覚えてもらえるといいです。

例として、コブ角が60°の方が手術を受けた場合、術後のコブ角は平均18°くらいになるということです。

表にするとこのような感じになります。

手術によるコブ角の変化

これらはあくまで参考値であり、手術によるカーブ矯正率というのは、術前の重症度、側弯症の原因(先天性・神経筋原性など)、手術の方法などによっても異なる可能性があります。

術前の重症度については、コブ角が80°以上といったカーブの大きい場合では、手術によるカーブ矯正率は平均58%であったと報告されています。

神経筋原性側弯症の場合でもコブ角が大きくなりやすいこともあり、カーブ矯正率が50%前後であったとの報告もあります。

このように様々な要素で手術のカーブ矯正率は影響されるため、一概に『側弯カーブが〇〇%改善する』とは言えませんが、大体の矯正率を知っておくことは重要かと思います。

まとめ

  • 側弯症の手術はコブ角が45°を超えてくると検討されます。
  • 側弯症の手術は後方脊椎固定術が一般的です。
  • 側弯症に対する手術のカーブ矯正率は平均65〜75%と言われています。
  • 矯正率は個人差がありますので、参考程度と思っておいてください。

手術の合併症については、過去のスタディブログも参考にしてください💡

どのくらいの確率!?『特発性側弯症手術の合併症』
参考文献

Deepak Neradi, et al.: Minimally Invasive Surgery versus Open Surgery for Adolescent Idiopathic Scoliosis: A Systematic Review and Meta-Analysis, 2022.

Matteo Traversari, et al.: Surgical treatment of severe adolescent idiopathic scoliosis through one-stage posterior-only approach: A systematic review and meta-analysis, 2022.

Hitesh N Modi, et al.: Surgical complications in neuromuscular scoliosis operated with posterior- only approach using pedicle screw fixation, 2009.

Masayuki Miyagi, et al.: Posterior Spinal Fusion Surgery for Neuromuscular Disease Patients with Severe Scoliosis Whose Cobb Angle Was over 100 Degrees, 2023.

2件のコメント

  1. 大体7割ほどの矯正率、初めて知りました!
    一覧表も有るんですね🧐
    情報ありがとうございます😊
    0°にはできなくとも、手術後のレントゲンと実際の背中を見て「こんなに真っ直ぐに😢」と感動した時のことは忘れられません、、、。

    1. コメントありがとうございます。
      側弯手術は平均すると7割程度の矯正率となります(一覧表は単純計算の自作です)。
      術前のコブ角や合併症のリスク、手術手技などによっても矯正率は異なるのであくまでも参考程度になりますが、参考になれば幸いです!

      手術される先生方はすごいですよね!

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