育成医療について

側弯手術と自立支援医療(育成医療)

今回は医療制度についてのお話です。

側弯症の手術はこれから説明する自立支援医療(育成医療)の対象となります。

育成医療とはどのような制度なのか?

対象となる条件はあるのか?

制度を受けるための具体的な方法は?

これらの疑問が解決するように、厚生労働省が発表している情報をもとにお伝えします。


自立支援医療(育成医療)とは?

自立支援医療制度とは、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。

簡単にいうと、「一定の条件を満たす場合に医療費が安くなりますよ」という制度です。

自立支援医療は、「精神通院医療」、「更生医療」、「育成医療」に細分化されています。

  • 精神通院医療:精神保健福祉法第5条に規定する統合失調症などの精神疾患を有する者で、通院による精神医療を継続的に要する者
  • 更生医療:身体障害者福祉法に基づき身体障害者手帳の交付を受けた者で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳以上)
  • 育成医療:身体に障害を有する児童で、その障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)

これらに該当する者が自立支援医療制度の対象者となり、側弯症手術が対象となるのは「育成医療」です。

育成医療の全体像

側弯手術と関係のある育成医療の全体像についてお伝えします。

育成医療の概要

育成医療は、児童福祉法第4条第2項に規定する障害児(障害に係る医療を行わないときは将来障害を残すと認められる疾患がある児童を含む。)で、その身体障害を除去、軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される、生活の能力を得るために必要な自立支援医療費の支給を行うものです。

上記の概要に書かれている「その身体障害を除去、軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者」に該当するのは以下の通りです。

《対象となる障害と標準的な治療の例》

  1. (1) 視覚障害・・・
    • 白内障、先天性緑内障
  2. (2) 聴覚障害・・・
    • 先天性耳奇形 → 形成術
  3. (3) 言語障害・・・
    • 口蓋裂等 → 形成術
    • 唇顎口蓋裂に起因した音声・言語機能障害を伴う者であって、鼻咽腔閉鎖機能不全に対する手術以外に歯科矯正が必要な者 → 歯科矯正
  4. (4) 肢体不自由・・・
    • 先天性股関節脱臼、脊椎側彎症、くる病(骨軟化症)等に対する関節形成術、関節置換術、及び義肢装着のための切断端形成術など
  5. (5) 内部障害・・・
    • 心臓:
      • 先天性疾患 → 弁口、心室心房中隔に対する手術
      • 後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術
      • 後天性心疾患 → ペースメーカー埋込み手術
    • 腎臓:
      • 腎臓機能障害 → 人工透析療法、腎臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • 肝臓:
      • 肝臓機能障害 → 肝臓移植術(抗免疫療法を含む)
    • 小腸:
      • 小腸機能障害 → 中心静脈栄養法
    • 免疫:
      • HIVによる免疫機能障害→抗HIV療法、免疫調節療法、その他HIV感染症に対する治療
    • その他の先天性内臓障害:
      • 先天性食道閉鎖症、先天性腸閉鎖症、鎖肛、巨大結腸症、尿道下裂、停留精巣(睾丸)等 → 尿道形成、人工肛門の造設などの外科手術

厚生労働省が示す《対象となる障害と標準的な治療の例》の4. (4) 肢体不自由の項目に『脊椎側彎症』と明記されています。

助成の内容

原則、自己負担が1割負担となります。また、所得に応じた負担上限額が設定されます。

助成の期間は原則として3ヶ月以内です。医療の内容によって最長1年まで認められるものもあります。

《育成医療適用後の支払いイメージ》

助成の原則としては自己負担が1割負担ですが、所得に応じた自己負担上限月額が設定されるのが特徴であり、側弯手術のように高額の治療費がかかる場合は上限月額が適応されることが多くなります。

《厚生労働省サイトから引用》

側弯手術は自己負担額が百万円以上となることもあり、かなり高額ですが、育成医療の助成を受けることで数万円程度にまで軽減されることもあります。

申請方法

育成医療の実施主体は市町村となりますので、申請に必要な書類を準備し、住所地を管轄する市区町村役場へ提出します。

申請書類は、市区町村役場の窓口や指定医療機関の窓口(医事課や医療相談室など)に置いている場合や、市区町村のホームページからダウンロードできる場合があります。

申請方法については、窓口での申請あるいは郵送での申請となります。

申請までの具体的な流れは以下に示すようなイメージです。

《申請までの流れ(初めて申請する場合)》
医療の内容の確認
受けようとする医療が、育成医療の対象になるか、医師に確認する。
このとき、育成医療が利用できる医療機関かどうかも確認する。
所得の要件の確認
所得の要件を満たしているか確認する。
所得の要件は、厚生労働省や市区町村のサイトに記載されている「自己負担額」の項目を確認する。
不明な点があれば、住所地を管轄する市区町村役場に問い合わせる。
書類の受け取り
住所地を管轄する市区町村役場から、「自立支援医療費(育成医療)支給認定申請書」、「自立支援医療(育成医療)意見書」などの様式を受け取る。
あるいは、市区町村のサイトから各種様式をダウンロードする。

<書類の一例(大阪市の様式)>
自立支援医療費(育成医療)支給認定申請書.pdf
自立支援医療(育成医療)意見書.pdf
医師に「自立支援医療(育成医療)意見書」の記載を依頼
「指定自立支援医療機関」の医師に、医学的意見書の記載を依頼する。
※医学的意見書の作成にかかる文書作成料は自己負担となる。
書類を市区町村役場へ提出
・自立支援医療費(育成医療)支給認定申請書
・自立支援医療(育成医療)意見書
・その他の確認書類
 ○世帯調書
 ○医療保険の資格情報が確認できるもの
 ○個人番号(マイナンバー)および身元確認ができるもの

その他の確認書類は市区町村役場によっても異なります。
書類の様式も多少異なるため、必ず住所地を管轄する市区町村役場の書類を準備する。

申請後の流れ

申請書類提出後、市区町村役場の管轄部署にて障害や所得の状況を審査します。

申請から受給者証発行までには通常1ヶ月ほどかかります。

審査の結果、所得要件や障害の要件を満たしていない場合や、医療の内容が育成医療の対象にならない場合などは、申請は却下となります。

支給認定されると、市区町村から「受給者証」が発行されます。

《受給者証のイメージ》

受給者証の「医療の具体的方針」に記載のある医療を受ける際に、育成医療が利用できるという仕組みです。

※育成医療で薬局を利用する場合、受給者証に書かれている病院が処方箋を作成する必要があります。

実際の使用方法としては、退院までに手元に受給者証を準備しておき、退院時の会計の際に受給者証を提示して1割負担あるいは自己負担上限額に減額してもらうといったイメージです。

受給者証の使い方

1. 受給者証に書かれている医療機関の窓口で、受給者証を見せて、育成医療を利用することを申し出る。

2.受給者証に書かれている自己負担額を、医療機関に支払う。

ただし、急な入院や手術で申請が間に合わなかった、医師から早急な治療が必要とされ事前申請が事実上不可能だった、申請書類の準備(診断書など)に時間がかかったなど、退院までに受給者証を準備できない場合もあるかと思います。

市区町村によってはこれらのケースに該当する場合、あるいはそれ以外のケースにおいても事後申請が認めていることもあります。

事後申請にて育成医療の助成を受ける手順としては次のようなイメージです。

  1. 治療後すぐに自治体窓口へ相談
  2. 「育成医療の申請書」「診断書(意見書)」「領収書」を提出
  3. 自治体で遡及申請として審査
  4. 認められれば、自己負担分との差額が後日払い戻し(または過払い分を減額調整)

確実に助成を受けるためには、手術の方針が決まれば早めに事前申請を行い、退院までに受給者証を準備しておくことをお勧めします。

育成医療の注意点

  • 育成医療は18歳未満が対象となります。
  • 育成医療が受けられる病院は都道府県が指定した「指定自立支援医療機関」に限られます(市区町村サイトにて確認できます)。
  • 育成医療は原則として医療開始前に申請することになっています。
  • 申請日(申請に必要な書類を申請窓口に提出した日)が医療開始日よりはるかに遅れた場合など、受給者証発行が承認されない場合があります。
  • 育成医療を受ける指定自立支援医療機関の指定は同一受診者に対して原則1か所となります(薬局は除く)。ただし、医療に重複がなく、やむを得ない事情がある場合に限り、複数指定されることがあります。
  • 医療保険が適用される費用が対象となるので、食事代や差額ベッド代などは助成対象外となります。

お住まいの市区町村によっては、育成医療に関する細かい取り決めが異なる可能性があります。

詳しく知りたい場合は住所地を管轄する市区町村役場の窓口にて聞いてみてください。

この記事は令和7年8月に書かれたものです。育成医療の利用を検討する際には、あらためて情報をご確認頂きますようお願いします🙇

参考資料

厚生労働省サイト:https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsu/ikusei.html

大阪市サイト:https://www.city.osaka.lg.jp/index.html

神戸市サイト:https://www.city.kobe.lg.jp/index.html

京都市こころの健康増進センター:https://kyoto-kokoro.org/

コメントを残す