骨成熟の指標、リッサーサインとY軟骨について

側弯進行を予測する『リッサーサインとY軟骨』

こんにちは!

以前のスタディブログ【側弯症の治療方針について】にて、側弯症の大まかな治療方針について説明しました。

側弯症の治療方針について

このブログでお伝えしたように、側弯症の治療方針を決める上で大切な指標のひとつに骨年齢があります。

骨年齢とは言い換えると骨成熟度です。

子供から大人になる過程で一部の軟骨組織は骨に変わっていきます。

この軟骨組織が骨化する移り変わりの段階を調べることで、骨成熟度がどの程度かを判断することができます。

今回は病院などで骨成熟度をどのように調べているかをまとめました!


【骨成熟度はレントゲンでチェック】

骨の状態を評価する一般的な検査はレントゲンです。

骨成熟度を判断する際にもレントゲンが用いられます。

確認する場所は主に骨盤付近です。

目安の指標は【リッサーサイン】【Y軟骨】と呼ばれる2つです。

リッサーサイン

骨盤の腸骨稜の骨化の進み具合をレントゲン写真で確認し、0から5までの6段階で評価する。

  • 腸骨稜と呼ばれる骨盤の外側に広がる部分は、骨端核(骨の成長過程で軟骨から骨に変わる際に現れる中心的な部位)が外側から内側に向かって伸びる。
  • 腸骨稜を4等分にして、この骨端核がどこまで伸びているのかを評価することで骨成熟度を判断する。
  • 成長が進むにつれてリッサーサイン[0]から[5]へと移行する。
  • リッサーサイン[0]:骨端核がみられないもの。
  • リッサーサイン[5]:骨端核が腸骨と癒合したもの。女子ではおおよそ18歳前後。
  • リッサーサイン[0]〜[3]:骨未成熟、リッサーサイン[4]〜[5]:骨成熟と判断される。
リッサーサインを説明した図

《リッサーサインの模式図》

リッサーサインのレントゲン写真
(Scoliosis Research Society HPより引用: 一部改変)

《レントゲン上でのリッサーサイン》

Y軟骨

Y軟骨とは、骨盤を構成する恥骨・腸骨・坐骨の3つの骨がY字型に結合している部分の軟骨のこと。Y軟骨は成長とともに骨化して癒合(閉鎖)し最終的には1つの骨になる。Y軟骨の骨化を有無をレントゲン写真で確認し評価する。

  • Y軟骨は11歳〜15歳ごろに閉鎖する。
  • Y字軟骨の閉鎖は、個人差があり、性別や成長速度によって異なる。
  • 軟骨はレントゲンでは写りませんが、「隙間がある=Y軟骨が閉鎖していない」と判断できる。
  • Y軟骨の閉鎖が進むと骨と区別がつかなくなる。
Y軟骨を説明した図

《骨盤とY軟骨の様子》

【側弯の進行と骨成熟の関係】

(日本側彎症学会編:『側弯症治療の最前線 基礎編』より)

側弯症は成長期に最も進行しやすいという特徴があります。

上図はその様子を示したものです。

図の見方ですが、『実線は身長の成長速度』を表しています。一方、『点線はコブ(cobb)角の推移』を表しています。

まずは実線の方から見ていきます。

実線の山が一番高いところに矢印で『peak height velocity』と書かれています。これは成長スパートと呼ばれる、最も身長が伸びる時期のことです。

(⬇︎コチラも参考にしてください⬇︎)

成長スパート後の身長の成長速度は緩やかになり、実線も徐々に下降しているのがわかります。

『peak height velocity』は性別差や個人差がありますが、女子で11歳前後、男子で13歳前後と言われています。

この時期を過ぎると次に『Y軟骨閉鎖』が起こり、そして『リッサーサインが0から5へ』と向かっていきます。

この順番が成長期のどの段階にいるかを判断する上で大切になります。

女子であれば『初潮』も『Y軟骨閉鎖』と同じような時期にみられるため、レントゲンを撮らなくてもおおよその成長期の段階を推測する有力な判断材料となります。

今度は点線に目を向けてみると、『peak height velocity』で最も急上昇しています。

これはコブ角の進行が『peak height velocity』=『成長スパート』で最も起こりやすいということです。

緩徐進行例・中等度進行例・高度進行例のいずれにおいても、右肩上がりに点線が上昇しているのがわかります。

ただ、よくよく見てみると、ある時期を過ぎると点線の上昇が緩やかになるポイントがあります。

ちょうど『リッサーサイン4』のところです。『リッサーサイン4』とは骨成熟と判断される段階です。

つまり、骨成熟が進むとコブ角の進行が緩やかになるということを表しています。

リッサーサイン[0]〜[3]、Y軟骨閉鎖前、初潮後1年以内は骨成熟未熟と判断され、医師はこのあたりの状況を見て、個人個人の【成長する余力(側弯の進行の可能性)】を予測して治療方針を立てたりします。

【まとめ】

側弯症の治療方針を決めるうえで、骨の成熟度はとても大切な判断材料です。

骨がまだ成長過程にある時期は、側弯が進行しやすいため、医師はレントゲンや初潮の有無などをもとに「どのくらい成長の余力があるか(=進行のリスクがあるか)」を見きわめています。

特にレントゲンにおいて、『リッサーサイン』と『Y軟骨』は成長段階を評価するための代表的な指標です。

現在の成長段階をなるべく正確に知ることで、必要な治療を適切な時期に行うことができます。


最終的な治療方針の決定は、骨の成熟度だけではなく多角的に個人個人の状況を視て行われますので、わからないことや不安なことは遠慮せず医師に相談してみてください💡

2件のコメント

  1. リッサーサイン、知ってはいたのですが詳しくは知らなかったので、とてもためになりました🙏
    娘の経過観察中に病院を受診する度に、「初潮はまだか」と先生から尋ねられていましたが、だからなのですね💦
    中1の初診時、初潮はまだ、コブ角は既に38度あったので、先生は手術適応角度まで進むだろうと考えていらっしゃったのでしょう、こちらがショックを受けないようにさりげなく手術の可能性を話してくださいました💦

    1. コメントありがとうございます‼️
      初潮について突然聞かれるとびっくりしてしまいますが、その理由を知っていると余計な不信感抱かずに済みますね😳

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