側弯症だと『健康』ではないの?

ー あなたは今、健康ですか?

そう聞かれたら、どう答えますか?

もし、側弯症があったらどうでしょう?

「わたし(この子)は健康ではない」

と考えてしまうかもしれません。

病気がある。
身体に変形がある。
治療が必要になることがある。

そう考えると、「健康」と「側弯症」は、反対側にあるようにも思えます。

でも、本当にそうでしょうか。

側弯症があっても、学校に通い、友達と笑い、スポーツを楽しみ、旅行に行き、自分の好きなことをして暮らしている人はたくさんいます。

反対に、病気がなくても、身体的にだったり精神的に辛い思いをしている人もいます。

あれ?

そもそも「健康」って何でしたっけ。

今回は健康について少し考えてみたいと思います。

WHOが定義した「健康」

1948年、世界保健機関(WHO)は、「健康」を次のように定義しました。

“Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.”

「健康とは、単に病気や病弱でないということではなく、身体的にも、精神的にも、そして社会的にも良好な状態にあること」

という考え方です。

当時としては画期的な考え方で、それまで健康は、どちらかというと「病気がないこと」として捉えられがちでした。

しかし、WHOは健康を、医学的な「病気の有無」だけではなく、人間の生活全体として捉えようとしたわけです。

この定義は現在もWHO憲章に残っており、正式には変更されていません。

しかし、この健康の定義は、時代背景とともに検討され続けています。

健康とは適応する能力?

現代社会は、寿命の延長による高齢化や慢性疾患の増加の課題に直面しています。

現代では、病気や身体的な問題を完全になくすことが難しいまま、長い人生を生きていく人が増えています。

そう考えると、

「身体的にも、精神的にも、社会的にも“完全に”良好な状態」を健康とすることは、少し現実と合わない可能性があります。

「健康の定義が完璧すぎて、ほとんどの人が健康と思えなくなってしまうのではないか?」といった指摘が多くありました。

そうした問題提起が、2011年に医学誌『BMJ』に発表された論文、“How should we define health(健康をどのように定義すべきか)?” につながります。

この論文の中心となったのが、オランダの医師・研究者 Machteld Huber(マヒテルド・フーバー) らでした。

「健康とは、完全な状態」ではなく「適応する能力」なのでは?

Huberらは、健康について新しい考え方を提案しました。

“Health as the ability to adapt and to self manage, in the face of social, physical and emotional challenges.”

「社会的・身体的・感情的な困難に直面したとき、それに適応し、自分自身で管理していく能力としての健康」

という考え方です。

これは、健康に対する見方を大きく変える考え方です。

健康を、「何も問題がない、完全な状態」として見るのではなく、「問題や困難があったとしても、それに適応しながら、自分らしく生活していく力」として捉えるというものです。

病気があってもいい。

障害があってもいい。

身体に特徴があってもいい。

大切なのは、

その人が、自分の身体や生活とどう付き合い、どう生きていくことができるか。

健康を「状態」だけではなく、「能力」として考える。

そんな新しい健康観が提案されたのです。

側弯症と健康について

では、側弯症はどうでしょうか?

ここで、もう一度側弯症について考えてみましょう。

側弯症がある。

それだけで、その人は「健康ではない」のでしょうか。

そう単純には考えられないと思います。

側弯症は、知っておくべき身体の状態です。

・経過を知ること。
・自分の背骨の状態を知ること。
・成長期には何が起こり得るのかを知ること。
・必要なときには医療機関で診てもらうこと。
・装具が必要なら、なぜ装具を使うのかを理解すること。
・身体を動かすことや運動について考えること。

こうしたことを自分自身で理解していくことは、とても大切です。

もちろん、すべてを自分だけで判断する必要はありません。

主治医やかかりつけの医療機関のスタッフの力を借りることも重要です。

そのうえで、

「自分の身体のことを、誰かに任せきりにしない」ということ。

これも、自分の健康を守るための大切な力なんだと思います。

「側弯症をなくす」だけが、健康ではない

側弯症があるからといって、「自分は健康ではない」と思う必要はありません。

だからといって、側弯症を無視する必要もありません。

側弯症を正しく知ること。

自分の身体の変化に気づくこと。

必要なときに適切な医療を受けること。

自分にできることを考え、実践すること。

そして、

側弯症があっても、自分らしい生活を続けていくこと。

それもまた、「健康」の一つの形なのではないでしょうか。

健康とは、「病気がないこと」だけではない。「何も問題がない完全な状態」でなければならないものでもない。

もしかすると健康とは、

自分の身体を知り、変化や困難に向き合いながら、自分らしく生きていくこと、なのかもしれませんね。


もう一度考えてみてください。

ー あなたは今、健康ですか?

もし、「健康じゃない」という答えなら、あなたの「健康」の形を見つけるお手伝いがPalmTreeでもできればいいなと思います。


参考文献

World Health Organization. Constitution of the World Health Organization. Adopted 22 July 1946; entered into force 7 April 1948.

Huber M, Knottnerus JA, Green LW, et al. How should we define health? BMJ. 2011.

Huber M, van Vliet M, Giezenberg M, et al. Towards a ‘patient-centred’ operationalisation of the new dynamic concept of health. BMJ Open. 2016.

Venkatapuram S. Health as Complete Well-Being: The WHO Definition and Beyond. Public Health Ethics. 2023;16(3):210–218.

コメントを残す